山田の講義資料など

作成:山田裕一 

過去の試験問題・練習問題

線形代数学の教科書が変わる 平成26年度(2014年)の機会に,このサイト「過去の試験問題」のメンテナンスをします.
ご了承下さい.役に立っていたとは思いますが,実に 8年ほど 更新していませんでした.

線形代数学 第一 中間   期末  
空間図形  
置換群:問 置換群:答
基本行列:問 基本行列:答
行列式:問 行列式:答
余因子:問 余因子:答
線形代数(両方) 1次独立:問 1次独立:答
正射影:問 正射影:答
線形代数学 第二 中間   期末  
証明   発展問題
指導的な練習問題
一般の線形空間1
一般の線形空間2 解答例 
練習問題(表現行列1)
練習問題(表現行列2)

試験範囲は毎年少しずつ変わります. 教科書によって 記号や表現が微妙に違います. 注意して下さい.


作成:山田裕一

自作プリント(必修科目編)

数学全般 数学で用いる基礎的な記号 ※ 写像に関する数学用語 ※
どうしてε-δ論法?
微分積分学 xnsin(1/x) の話 そぅ〜と増え始める関数の話
マクローリン展開の解説(1変数)※ 双曲三角関数
極座標変換 ※ fxy と fyx について
マクローリン展開の解説(多変数)※ 極値判定での誤った直感
線形代数学
  第一
高校数学だった行列 (2015) 行列演算に関する詳細 (2014)
連立方程式の解の様子 (2014) 正則行列 (2014)
空間図形 det(AB)=det(A)det(B) の証明
線形代数
(両方)
行列の対角化 (2019)
線形代数学
  第二
線形と言えば (2014) 生成する, 基底と次元 (2014)
変換行列について (2014) ※ 行列表示
表現行列・図式 練習問題 (2016) 上向いて右向いて (2014)
内積・正射影 (2014)
無限次元では (200?)
解析学 内容:微分方程式と整級数
特殊解の求め方,練習問題 微分方程式の補足
収束判定, 級数についての補足
※印のものは下の方に解説があります.  更新日の記載のないものは 2011年以前の作成です


作成:山田裕一

自作プリント(選択科目編)

幾何学概論
応用幾何学
(2018以降)
内容:ベクトル解析から微分形式へ
微分積分ダイジェスト(縮小版) 線形代数ダイジェスト(縮小版)
行列の指数写像 exp(縮小版)
ベクトル解析の記号 (2018) 外積代数, 外微分 (2018)
2つの演算の組み合わせ (2018) 曲線や曲面の向き,幾何の用語 (2018)
線積分, 面積分の計算例 (2018) 積分定理の証明の概要 (2018)
微分形式で電磁気 (2012)
現代数学入門A 内容:ε-δ論法,集合,写像,位相の基礎
集合の濃度・無限集合の濃度の不思議 集合論から位相へ
R2 に入れられる距離・1つの集合に二つの距離・位相
コンパクト集合
現代数学入門B 内容: 代数学の基礎
群・環・体 など サイコロに作用する群
有理数Qと実数Rと複素数Cそして
代数と幾何学 内容:曲面とホモロジー
代数的な商集合 加群
ホモロジー
応用幾何学
(2010以前)
内容:変換群とリー群
多様体とは 写像の微分
群論の基礎事項 行列群からリー群へ
行列の指数写像 exp 左不変ベクトル場(行列群の場合)
応用幾何学
(2011以降 
 2017まで)
内容:ベクトル解析から微分形式へ
微分積分ダイジェスト 線形代数ダイジェスト
ベクトル解析の記号 (2014) 双対空間と外積代数, 外微分 (2011)
2連操作 rot∇ と div rot (2014) ベクトル解析からの補足 (2011)
幾何の用語(積分に関する注意) (2014)
線積分, 面積分の計算例 (2011) 微分形式による計算例 (2014)
積分定理の確認 (2011) 積分定理の証明の概要 (2011)
※印のものは下の方に解説があります.  更新日の記載のないものは 2011年以前の作成です


作成:山田裕一

0. 私がプリントを作る理由

 (1) 教科書よりわかりやすい説明をしたいとき.
 (2) 教科書の方法や記号が "普通でない" とき.
 (3) 教科書とは別の方法・考え方があることを知ってほしいとき.
 (4) 教科書に載っていない "補足" を伝えたいとき.
 (5) 黒板が小さくて困るとき.
 (6) 用語の定義ばかりが続くとき.
 (7) 省略したくない何かがあって時間が足りないとき.
 (8) 1つのテーマが教科書の数か所に分かれているとき. (そのことを予め最初に予告する)
 (9) やりがいのある,勉強になる練習問題を作ったとき.


1. 数学で用いる基礎的な記号

(数学全般) Up↑

全ての山田の講義で 初回に配っています.
黒板 や ノート を楽にするための記号です. より多くの時間を「数学そのものの考察」に使ってほしい.

 例:「任意の実数 x に対して, それより大きな自然数 n が存在する. 」    を 「∀x ∈ R, ∃n ∈ N s.t. n > x.」


2. 写像に関する数学用語

(数学全般) Up↑

一般に, 集合 X の任意の元(要素)x に対応して 集合 Y の元 f(x) が1つ定められているとき,

 f : X →Y  と書いて  X から Y への写像 f

と言います. Y が数の集合(R など)のときは 関数 と呼ばれることもあります. 数学のいろいろな場面で写像の概念が登場しますので, 基本的な用語や記号がいくつか用意され整備されています.
 ○ 高校数学で学ぶ y = x2 や f(x) = x2 のような書き方は 一種の省略形 "f の全情報の一部だけ書いたもの" と言えます.
 ○ 例えば f(-2)=4 であること(f が 元 -2 を 4 に写すということ)を f: -2 → 4 とは書きません.
   元の対応には違う形の矢印を使います. 記号の整備によって, 誤解を減らすことができます.

1年生の数学だけでも, 少なくとも次の箇所で 写像の概念 に遭遇すると思います.
  微分積分学: 逆関数, 合成関数の微分(1変数, 多変数)
  線形代数学: 線形写像, 像と核, 写像の合成
1年の間に何回か登場するのだったら, 始めにまとめて理解しておいて 登場するたびに復習する方が, 効率が良いと思います.
その意味で, このプリントは1年間の数学の中から写像に関係する部分を集めた 予告編 と言えます.


3. 極座標変換

(微分積分学第2) Up↑

極座標変換は,微分積分学第二の中で,何回かに散らばって登場します: 合成関数, その微分(ヤコビ行列式), 重積分の変数変換, ... ですので  始めにまとめて理解しておいて 登場するたびに復習する方が半年間の学び方として理解しやすいと思います.

極座標変換(平面, 空間とも)は 他の分野でも頻繁に遭遇すると思います. ところが, 数学以外の 場面では単に公式を使うだけかも知れません. 公式集に載っているから, と暗記もせず, 暗記するための工夫も考えない. それだと理解の深さが減ってしまいます. このチャンスに, 数学としてのその公式(特に,その意味すること. 感覚)を考察し, 一度だけでいいから自分で計算して証明して, それによってカンを掴むことが必要だと思います.

極座標にまつわる公式を計算で確認するのは結構大変です. 一時的に長い長い式になって(予測や思考力が足りないと,ここで不安になる.)  sin 2 + cos 2 =1  による キャンセルで綺麗にまとまっていくものです.


4. マクローリン展開

(1変数:微分積分学第1,多変数:微分積分学第2)  Up↑

1変数の場合 黒板が狭いため, アイデアを説明する と 計算例が書けない. そこで, プリントを作りました.
多変数の場合 教科書 と 演習書とで 記述が違う ことから、 学生の方々が混乱しないためにプリントを作りました.
さらに, 教科書に関して一言説明を加えたいことがあります.

例えば、関数 f(x,y) をマクローリン展開しよう、というときに 説明なしで突然 h や k (もとの変数が x, y なのに!) の式を書き始めたら 「ん? 何を始めたのかな?」と思って/思われてしまう、 と思います.

例: ex sin y の (1, π/2) でのテーラー展開
 【山田が "普通これだ" と思う表示 】式の形をみればどこで展開したか明らか.

e + e(x-1) + (e/2) {(x-1)2-(y-π/2)2} + (e/6) {(x-1)3-3(x-1)(y-π/2)2} + …

 【教科書のみで勉強した学生が答えそうな表示 】
e + eh + (e/2)(h2-k2) + (e/6)(h3-3hk2) + …                 

左辺 "e1+h sin (π/2 + k) = " をきちんと書いて、計算に間違いがなければ「変わった人だな」と思うくらいでしょうけど...
原稿の中の問題点の指摘は 2001年に数学演習第二を 一緒に担当した 伊東裕也先生 と 石田晴久先生 に 受けました.


5. 「変換行列」に関する山田の考え

(線形代数学 第2) Up↑

教科書(当時)の定義と演習書の定義が違い, 先生方の間でもおそらく意見が 違ってくるこの問題の扱いについて山田の意見を述べます.
論点: 線型空間 V に2組の 基底 B と B' をとるとき、両者の関係を 行列を使って記述するもの
   「B から B' への変換行列」とは何か? (人によっては逆行列になる? 転置行列になる人も?)

山田の考えのポイント  2005.06.16 更新(基本部分 は 2000年頃から変化していません)

 (1) 「 B から B' への」の部分を逆に述べる流儀がある という扱いは表面的ではないか.
 (2) 「基底変換行列」と「座標変換行列」という別々の概念があって, 数学的には両方とも重要.
 (3) 両者は紛らわしいので、区別して理解する必要がある.
 (4) 「変換行列」という(基底変換か座標変換か明示しない)表現は誤解を招く.
 (5) 「一方『基底変換行列』だけを扱い, 変換行列といえば『基底変換行列』のこと という指導でどうでしょうか?」にも反対.
 (6) 両者は無関係ではない. 特に、次の事実には(知識としても)価値がある.
[事実] 「基底 B' から B への取換えに伴う座標変換行列」は「基底 B から B' への基底変換行列」に等しい.
 以下は, より山田の偏見に近い部分の意見

(補1)「座標」(点の位置 や 集合の元 を 数 を使って表す)という発想と, 座標が2つあれば     一方から他方への言い換えが生じる, そういう基礎的な発想が重要. (補2)「基底変換」は 線形代数 にとっての重要概念である. (補3)抽象的な線形空間 V を想定している場合, 上の [事実] を示すのに     V^n(Vの元を成分にもつ n 項ベクトル)における等式(表記法)を使うのは便利で良いのだが,    「行列の積の成分計算を応用する」,「厳密ではないが便利だから使う」と説得して使う必要がある.    * 等号(の両辺)が属す集合の確認は 数学の基礎事項で, 常に気を配る習慣にすると良い.    例:2つの基底 B:= <v1, v2, ... ,vn>, B':= <v'1, v'2, ... ,v'n> に対して,      P が BからB'への基底変換行列であるとは,  (v'1, v'2, ... ,v'n) = (v1, v2, ... ,vn) P ということである.      このとき c' を縦ベクトルとすると (v'1, v'2, ... ,v'n) c' = (v1, v2, ... ,vn) P c' となるから...      というふうに, 上の[事実]が 一応 説明できるわけだが. (補4)山田は「基底変換行列」を習った記憶が 実はない.    「座標変換行列」の方はいつ、どの教室で、誰にどう習ったかまでよく覚えている. それは感動があったから.      そうか人類は, Rn と行列の計算を理解した時点で, 今後どんな 未知 の集合も, 線形性 を持つ限り      既知のものRn(実数を n 個並べた集合)と同一視して扱っていく, というわけか.

最後に:ここに書いたことは「どう教えるべきか」というより「どう学びたかったか」に近いです。
作成:山田裕一